月額制デザイン制作は本当にお得なのか?

デザイン費の算出は難しい。

デザインの制作費には、定価をつけることはできない。
同じ規格の工業製品を作るわけでなく、あなたの会社のために制作する「1点もの」であるからだ。
たとえばWeb制作なら、「何を作るかを考える」企画費・「デザインを考え、作る」デザイン費、「文章を書く」コピーライティング費を基本に、写真撮影費やイラスト制作費、コーディング費などがかかる。

それぞれの作業にかかった時間や修正作業の量、関わった人の数によりその金額は大きく変動するのが普通だ。
AIなどによる自動化で機械が勝手に制作できるならともかく、
今はまだ人の手で地道に作っているから、圧倒的にコストを下げる手段はまだない。
(下がっているように見えるとしたら、ヤマト運輸のドライバーとおなじような境遇に制作者自体が陥っていると思ってもらえばいい)

そういった理由により、デザインの料金は事前に把握するのが難しいものであり、料金表が存在してもあくまで「目安」としてのものだった。
大体、作っている人間が把握できてないことも多い。
次々と追加のオーダーや変更などの対応に追われる中、気がついたら予定金額を超えていたなどということはザラである。

 

デザイン費とは、人件費。

デザインの制作費とは、そこに関わる人間全員が動いた時間の合計だから、作業が増えれば金額も上がるのは当然なのである。
で、最後は発注側と丁々発止しながら最終的な金額の落としどころを探っていく。

このようなやりとりは、この業界で数十年ずっと続いていたわけだが、
ここに来て新しい動きが出てきた。

それが月額制のデザイン制作である。
どうせわかりにくいデザイン制作費なのだから、月々いくらです、と言ってしまったほうが顧客も安心できる。
世の中はオープンな時代だからね。

ということで、適当にググって出てきた数社の内容を比較してみる。

制作
会社
月額作業
上限
作業
内容
別途
費用
備考
制作秘書6万円20時間主にweb関連。デザイナーやコーダーで対処できる内容までJavaScriptなどプログラマー対応が必要なもの、動画制作など契約期間が長くなると割安
CasterBiz Design8万円15時間web用画像制作、LP制作、チラシやロゴマーク制作他
作業時間30時間まで15万、30時間以上応相談の別メニューあり作業時間30時間まで15万、30時間以上応相談の別メニューあり
DEZARI7万円デザイン提案1案、修正3会までweb用画像制作、LP制作、チラシやロゴマーク制作他本格的なムービー制作修正回数の少ないライトプラン(3万)、提案数3案までのゴールドプラン(15万)あり
ツキギメ6万円名刺・チラシ・ポスター・パンフレット・ロゴマーク他訪問打合せ費用・特急費用・ディレクション費・撮影費・web制作・動画制作契約期間が長くなると割安(1年契約だと月額3万)
運営企業は、もともとコンピューターの保守サービスみたいだった会社や印刷会社、デザイン事務所などいろいろある。各社3パターンの料金タイプがあり、安いところは3万からある。ただし随時制作受付していないとか、文章なども必要とか、フォーマットにもらった素材を流し込むぐらいのレベルだたりする。中心は6万から8万だけど、契約期間のしばりや作業内容などは各社マチマチだ。

 

で結局どこが安いんだとなると、まるでわからない。

各社の得意分野が違うからもちろん一概には言えないが、たとえばweb制作が作業内容に含まれる制作秘書とCasterBiz Designでは、共に月の作業時間上限の目安を設けている。

また、動画制作などは別途費用となることから、
月額の範囲でwebサイトなどの制作は厳しそうだ。
素材を提供するランディングページなどが現実的なところかもしれない。

動画などの素材制作まで自社で完結できる大手ならともかく、
外注費が発生する作業は基本的に別途請求となる。
CasterBiz Designだと画像制作も入っているから、仮にLPを月2本頼めるなら結構お得かもしれない。

逆にツキギメのような内容だと別途費用の範疇が大きいので、お得なのかどうか今ひとつわからない。
素材やテキストなどを提供して、フォーマットに沿ったレイアウトを上げてもらうぐらいの作業と想定すれば、チラシ制作の多い会社とかは重宝するかもしれない。

月額固定でなくとも、激安を謳うWeb制作会社なども基本フォーマットにクライアントが用意した素材やテキストを入れるだけだともちろん安くできる。

でも、それ以上の価値のある仕事を望むなら、どこに頼もうがそれなりにかかる。

今回適当に選出した4社は作業範囲も条件も違うので比較にはならないが、
別途費用の部分の詳細がない限り月額固定のメリットもちょっと感じにくい。
デザイン制作というのはそれだけ変動要素が大きいので、
こういう課金の仕方をするならかなり慎重にやらないと受注側にとってもハイリスクであることは間違いない。

で、結局、月額制デザイン制作のビジネスモデルはお得なのか?という疑問には、
「場合によってはお得」ということは言える。
あとは、月額固定かそうでないかに関わらず、よい制作会社、よいデザイナーを見極めることである。
こっちのほうがよほど大事だが。

でも、料金がわかりやすいってのは大事だよね。
うちも月額制を検討してみようかなと、ちょっと思います。

このエントリーをはてなブックマークに追加