その名に恥じないものを作る

今日家族で横浜に遊びに行った。
中華街で早めの昼食を食べ、元町で買い物をし、外人墓地や山手の西洋館を
いくつか見て回るという極めてスタンダードな観光コースだ。

若いころにはもちろんデートスポットとして訪れていたが、
もうここ十何年かは横浜といえば中華街の目当ての店に食事に行く、以外の行動をしたこともほとんどなかった。

娘がだいぶ成長したこともあり、社会科見学的にいいかもぐらいの感じで行ったのだが、
一日かけて巡る横浜フルコースはなかなか感慨深かった。

西洋館エリアに行く途中に外人墓地があるが、今日は公開日ということで
入り口のあたりで係の人が積極的に勧誘しているので入ってみることにした。
外人墓地に入るのは初めてだった。

入り口を入ってすぐ目の前にある資料館でひととおり横浜の歴史など勉強したあとで、
敷地内を巡ってみた。
横浜の発展に寄与した人の墓が案内所に記載されており、
その功績が刻まれた石碑などを眺めて歩いていたが、ふと知っている名前に出来わした。


 

LECOMTE「ルコント」と刻まれたそのスペルに見覚えがあった。
そう、あの有名なパティシエ、ルコントさんの墓である。
ルコントさんは日本で初となるフランス菓子専門店を開店させた。
今日の日本におけるスイーツブームの草分け的存在である。

もう20数年前のことだけど、妻と結婚式をするとき、そのウェディングケーキをLECOMTEで作ってもらったのだ。
当時はおいしいフランス菓子店などそう多くはなく、
初めて入ったLECOMTEで食べたムース・フランボワーズは衝撃的だった。
それ以降、ちょくちょくLECOMTEでお菓子を食べるようになり、大ファンになったしまった。
結婚式のウェディングケーキも、当然LECOMTEで作ってもらいたいと思うのは自然な成り行きだった。

その頃すでにLECOMTEは芸能人も自分のオリジナルケーキを頼みに来るなど、
有名店にもなっており、果たしていくらで作ってもらえるのかはわからなかったが、
とにかく自分たちの予算は決まっており、3万円を握りしめて店へ行った。

「オリジナルケーキは7万円からになります」とあっさり店員に言われたものの、
LECOMTEの大ファンで他の店では考えられないなど一通り思いのたけをぶつけたところ、
ちょっと裏で相談していた店員が「3万円でやらせていただきます」と快諾をしてくれたのは驚きだった。

「でも3万じゃ、やっぱりそれなりのケーキですよね」と聞いてみると、
「たとえ3万でもLECOMTEの名に恥じないものをお作りします」とのこと。
結婚式当日はその言葉に違わず見事なケーキが届き、涙がでるほど嬉しかった。

サービスするということは人への思いなんだなということを
このときのLECOMTEに学んだんだよね。
心に刻んだつもりがよく忘れちゃうんだけど、
これがブランディングの根本である。

ルコントさん、ありがとう。
今度また横浜に来たら立ち寄ります。

 

最後まで読んでいただいてありがとうございます。
デザインを戦略にして、もっといい会社になろう。

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