カメラマンの今井正明氏より、「DEATH ROW」という写真集をいただいた。
これは今井さんがアメリカの死刑囚たちを4年に渡って撮影したポートレートで、
様々な死刑囚たちの表情が収められている。

ページをめくってまず驚いたのが、本当にこれが死刑囚かと思うぐらい、みんな穏やかな目をしているということだった。
死刑囚といえば独りよがりな殺人者であり、人間的なやさしい感情など一片も持ち合わせていない人間という認識しかなく、
そのような人間にも「表情」が存在することなど考えたこともなかった。

けれど、静かにこちらを見つめる死刑囚たちの瞳は、穏やかで、そして何かをしっかりと語りかけてくる。
犯してしまった罪への後悔なのか、自分がその命を絶ってしまった被害者への贖罪の気持ちなのか、
それはわからないけれど、死刑囚ひとりひとりが死刑という自らの運命を認識し、なにかを悟っているようにも見える。

こうして彼等の表情をみていると、
みんな、なんてことのない普通の人間だ。
罪を犯す前は、普通に笑い、普通に食べていたりしていたのだ。
そんな普通の人間が、同じその手で人間を殺す。

その瞬間はなんらかの狂気に支配されていたのだろうか。
けれどここにいる彼等にはそんな狂気はどこにも見えない。
今ここにいる姿こそが、彼等本来の姿であるのだろう。

この写真集は1997年に発行されたものだから、もう20年前のものだ。
ここに写っている死刑囚たちは、きっともうこの世にいないのだろう。

機会があればぜひ見ていただきたいと思うが、
Amazonとかでは売っていないので、神保町の古書街などで探すしかないかもしれない。