近道なんかなかった社長の顔だって、いい。
人が最も反応するのは、人の表情だ。
深く刻まれた皺、穏やかな中にも鋭さを感じる老人の顔。
人生の教訓を語りかけてくるサントリーオールドの広告は、大人のかっこよさに溢れていた。
80年代、ぼくが広告業界の入り口らしきところに初めて立ったときに目にして、
衝撃を受けたことをよく覚えている。
John Hustonという男があってこそこんなカッコイイ広告ができたんだ、というのはもちろんなんだけど、
自分の会社の事を語る社長もこうあって欲しいと思うのだ。
「映画俳優でもないし、イケメンでもないし、デブだし、チビだし、ハゲだし、
そんなワタシに何いってまんねん」とか言われそうだが、いいじゃないですか。
社長自身がコンテンツだ。
企業のWebサイトは多くは社長が顔を出していて、
当社の理念みたいなことが書いてあるページが必ずある。
でも小さな写真で、椅子に座っているだけだ。
なにか、もったいないと思うんですよ。
たとえば東京の下町にある小さなネジ工場の社長だったら、
油まみれの顔で出てきて、「ネジだけ作ってきた、これからもそうだ」とか言って欲しい。
パン屋のオーナーでも、文房具屋の主人でも、
それまでに積み重ねてきた時間というものがあるかぎり、必ずドラマを持っている。
様々な危機や紆余曲折を乗り越えてきた人の顔は、そんなにつるっとしていない。
デブでもハゲでも、それは味だ。なんの問題もありません。
ぽっと出の兄ちゃんがやっている向かいの店には、決してマネのできない強みだ。
やれコンテンツマーケティングだ、オウンドメディアだ、SNSだと、
今の時代は何かとやらなきゃいけないことが多いけれど、
それまで会社を率いてきたあなたのドラマこそがコンテンツであり、
人の琴線に触れることが出来ると思うのです。
だからあまり構えずに作っていきましょう。
あと、もうひとつ、
その「表情」をちゃんと写し撮ってくれるカメラマンは必要です。
部下にスマホで撮ってもらっちゃダメですよ。
少しだけお金をかけて、いいカメラマンを選んでください。
追伸
偉そうなこと書いといて、自分の写真は全然なってないじゃないかと
お叱りをいただいてしまいそうなので、今度ちゃんとやります。
薄っぺらなワタシですが。
最後まで読んでいただいてありがとうございます。
デザインを戦略にして、もっといい会社になろう。