チョコレートという概念をリデザインする。
代々木八幡のあたりにミニマルというチョコレート屋がある。
チョコレート屋と言っても、おしゃれなチョコレートがあって、それを買うために行列ができるような店ではない。
2〜3年ぐらい前からじわじわと流行ってきているBean to Barだ。
Bean to Barは、その店自身でカカオ豆を焙煎し、豆を挽き、
型に流し込んでチョコレートを作ることからその名前がついた。
カカオ豆の選択に始まり、焙煎時間や挽き方、砂糖の種類や割合などでまったく味の違うチョコレートになる。
店の数だけ味のバリエーションがあると思っていい。
この店のチョコレートは店主が厳選した数種類のカカオ豆をそれぞれブレンドせずに作っているから、
チョコレートを食べるということはそのままカカオ豆を味わうということでもあるのだ。
まるでフルーツのように酸味があるものだったり、
よく知ってるチョコレートの味わいなんだけどその深さがまるで違ったりと、
チョコレートの概念をことごとく崩してくれる。
コーヒーも様々な豆の味を楽しむものだが、同じようにチョコレートも豆そのものを楽しむことができる
シロモノなんだと気づかせたBean to Barの功績は大きい。
チョコレートは大きなメーカーが作るものだ、とずっと思っていたから、
ミルクとブラック、あとは外国製の高いやつぐらいがチョコレートという食べ物の全てだと信じて疑わなかったのだ。
ミニマルという店は、チョコレート好きだった店主が脱サラして始めたそうで、
もともとは金融系の仕事だったため自分ではチョコレートが作れず、
知り合いの喫茶店のマスターをスカウトして一緒に事業を立ち上げたそうだ。
どうやって口説いたのかは聞き忘れたけど、自分の夢がその人の夢にもなるように熱く語ったんだろうな、きっと。
さて、そんなミニマルも最近は銀座にアンテナショップを出すまでになっている。
日本酒の獺祭とコラボレーションしたり、ハンドメイドチョコレートの啓蒙のためのワークショップを定期的に開催したりと、
極めて正当で手堅いプロモーション活動を地道に積み上げていった成果だ。
インドネシアのカカオ農家に発酵や乾燥のレクチャーをしにいったりと、
チョコレート屋の生命線であるカカオ豆の調達・品質向上にも取り組んでいる。
カカオ農家って、大体赤道近くの国々にある。
昔から大メーカーから安く買いたたかれてきたせいもあり、品質を向上させるという意識はあまりなかった。
でもフェアトレードという概念が徐々に浸透し、いい物を作れば収入は上がるんだという自覚も出てきた。
真剣に勝負するBean to Barは、そのように農家自身を育てるということに行き着く。
自分でカカオ農家を経営しているBean to Barもあるぐらいだ。
チョコレートの概念を大きく変えたこの市場、
みんながそれで当たり前と思っていたものの新しい魅力を掘り起こしたところが本当にすごい。
まさにプロダクトのリデザインだよね。
既にあるものでも、まだまだ改善の余地は残っている。
思考停止しないで生きていきたい。
最後まで読んでいただいてありがとうございます。
デザインを戦略にして、もっといい会社になろう。