デザインの発注書 その3 〜こんな発注がデザイナーを堕落させる〜
世の中の多くのデザイナーは、自分に発注してくれたクライアントのために
いろいろ提案したい生き物だ。
たとえば商品パッケージ開発の依頼をされたら、まずはその商品について徹底的に知る努力をする。
それが食べ物なら競合商品も含めて食べてみる。そして味の特徴をつかむ。
競合商品とくらべてうまいのかまずいのか、味の特徴はどうだろうかなど、
商品パッケージに込める「核心」を探すのである。
次に競合商品のパッケージを並べて見る。
商品ロゴや色などの比較はもちろん、パッケージを構成する要素も分析していく。
なぜこの部分はフィルムなのか、他の素材ではダメだったのかなどの思考を重ね、
自分がデザインする新商品のあるべき姿をイメージしていくのだ。
そうやって検討した中から、たくさんの商品が並んだ店頭で手にとってもらえるデザインをクライアントに提示する。
それが店頭に並び、ちゃんと売れたときにデザイナーは最大の喜びを得る。
そしてそのような結果が出たとき、発注した企業もデザインの価値を大いに感じ、
その後も企業とデザイナーのいい関係を続けていくことができる。
だが逆の例もある。
デザイナーが持てるポテンシャルを発揮せず、「手を抜く」という事態だ。
気持ちが入らない状態といってもいいかもしれない。
それはこんな理由による。
①クライアントがデザイナーを尊重していない
お互いの信頼関係が醸成されない、不幸なパターンだ。
デザイナーの提案に対し、全くの思いつきや好みで変更を加えてしまう。
思いつきだから、変更理由も明確にできない。デザインには好みがあることをもちろん否定しないし、
デザイナーの提案をそのままお買い上げすべきだと言っているのではない。
デザインに修正を入れたいのなら、なぜその修正を入れたいのか、その主旨を明確に伝えることに専念すべきだ。
度重なる理不尽な修正要望は、デザイナーのやる気をそぎ、「言われた通りに直しとけばいいよね」ということになる。
その主旨をどうデザインに反映するか考えるのは、
デザイナーの範疇として力を発揮してもらったほうが遥かに建設的だと思うのだけど。
②期待値ばかり高く、その割に与える情報量も時間も費用もまったく見合っていない
Webサイトなどの仕事は、本当にこの傾向が強い。
まともな思考を巡らして仕事にあたるということが不可能な金額が前提になることは珍しくない。
そして、それ以外の仕事もそうだが、まともなオリエン書というものをもう何年も見ていない。
常識的に考えて、その制作物の目的や、商品の概要、納期などのスケジュール、
予算ぐらいはしっかり書面にしておかないと、上がってきた制作物に関して是非の判断も何も出来ないよね。
作業の進行中にどんどん追加要望が出てくるのも、オーダー内容を吟味せず、
とりあえず見切り発車してしまった場合に多い。
作業が増えれば当然制作費用も上がるのだが、その点について何の説明もないと、
「こんだけやらされて、ちゃんと金もらえるんだろうな」とデザイナーは不安になる。
大抵はそのまま最後に値切られるということもわかっているから、
そろそろやばいなと感じたあたりからクオリティは落ち始める。
なんかもう、デザイナーに限った話でもなくなっちゃったような気もするが、
上記のようなことでやる気をいつまでも保てる人間がいるだろうか。
お金を入れたらすぐデザインが出てくる自動販売機じゃないんだから・・・
と書こうとしたけど、そう思われてるんだな、きっと。
もはやAiがデザインしてくれないと、人間では最近のオーダーにはもう答えられないのかもしれないね。
最後まで読んでいただいてありがとうございます。
デザインを戦略にして、もっといい会社になろう。