デザインの発注書 その2 〜開発ストーリーを語ろう〜
クライアントが与える商品知識より重要なものはない。
デザイナーに依頼するものがロゴマークでも、商品パッケージでも、Webサイトであっても、
消費者の共感を得ることが自分の商品の発展につながると思うのなら、
デザイナーには様々な情報を与えたほうがいい。
なぜなら、デザイナーは自分がインプットした情報を整理し、
市場の中で打ち出して行くべき訴求点を見出さなくてはならないからだ。
商品スペックなどはもちろん重要項目だが、これだけをデザイナー与えてもいい結果は出ない。
人がものを買ったりするのは、もちろん必要があるからだが、
同じようなものが並んでいればよりその存在理由が明確なほうや、よく知っているメーカーのものを選ぶ。
あなたの会社が世間的に無名であれば、商品をより魅力的に見せるために、「感動」をつくらなければならない。
「感動」がなければ、人は動かないと思っていて間違いはないと思う。
なぜその商品が誕生したのかという「開発ストーリー」はとても重要である。
あなたはなぜその商品を開発しようと思ったのか。そこには明確な理由があるはずだ。
これこそが商品を語る最も重要な材料である。
過去に絶対に破れないジーンズを開発した社長の話を聞く機会があったが、
バイク乗りのその方は、転倒すると必ず破れてしまうジーンズを見て
「バイクで転んでも絶対に破れないジーンズを作りたい」と決意した。
そして、その商品を実現するために一緒に試行錯誤してくれる工場を探し、
様々な問題をひとつひとつクリアしてついに商品化に至ったそうだ。
また、ずいぶん昔の話になるが、トヨタのセルシオという車の新聞広告をつくる機会があった。
それまではクラウンがトヨタのフラッグシップだったが、
性能面で欧州車に肩を並べる車を作るというトヨタの強い決意があった。
従来の日本車を超える高速安定性を実現するため、新しくテストコースを作ることから始め、
数えきれない数のクラッシュテストなど、その開発ストーリーはセルシオの品質を語るのに十分すぎる説得力があった。
そのときの新聞広告はそれを形にしただけである。
こんな劇的な開発ストーリーはうちなんかないよ、と思うかもしれない。
でも、その商品を作りたいと思う理由は必ずあるはずだ。
そして、その開発過程の失敗などは、すべてストーリーを構成する要素だ。
劇的にならなくたって、その商品が存在する理由が消費者の胸に刻めればいいんです。
その商品、ひいてはそのクライアント自身が市場の中でどう成長してきたか、
どんな紆余曲折があったのかなど、強みも弱みもすべて、
デザイナーに伝えてほしい。
ここでかっこつけてもまったく意味がない。
そして、ここにめんどくさがらずに付き合ってくれるデザイナーを選ぼう。
これも、とっても大事なポイントです。
最後まで読んでいただいてありがとうございます。
デザインは戦略です。
デザインタイズして、もっといい会社になろう。
※「デザインタイズ」とは、デザインで企業価値を創るという意味を込め、”マネタイズ”からもじった造語です。日本人以外には通用しません。